独学ノススメ~柳川範之・東大教授~
12月22日付け、読売新聞「『独学』は時代の要求 柳川範之・東大教授」より
1 記事要約
経済学者で柳川範之教授の『東大教授が教える独学勉強法』(草思社)が、7月の刊行以来6刷・3万3000部と好調だ。勉強の指南書として分かりやすいこともあるが、「『独学』というあり方が今の日本人に必要とされているからではないか」と教授は語る。
教授は10代のころブラジルに住み、独学で大検に合格し、慶応大経済学部通信教育課程に入学し、シンガポールに住みながら通信教育で再度独学した。
独学について教授は、学校に属さず誰の教えも受けないという狭い意味ではなく、「自分のペースで自分で判断しながら勉強していく」という広い意味で捉える。改めて独学を進めるのは、「今は多様性が求められる時代。決まった目標の達成よりは『宝探し』のような学びが大切になっている」からだ。一方、近年は大学の講義がネット配信できるようになり、独学に適した環境が整いつつある」と述べる。
本書では、「なぜ人は勉強するのか」などの本質論を展開した上で、独学の長所として、
・自分のペースで勉強できること
・自分に合った教材を選べること
・自分で考える癖がつくこと
を指摘し、学ぶ姿勢としては、
・本に正解を求めるよりは、書かれたことを疑ってかかる癖
を持つことを薦める。
とかく社会人は忙しいが、「仕事を辞めず、空き時間や週末などに、仕事と異なる関心を深めていってはどうか」と教授は提案する。しかし、独学となると、さぼってしまったり、独りよがりな方向へ進んでしまったりする可能性もある。これについて「別にさぼっても構わない、また独学だからといって、他人に教えを受けることを否定するわけではない。勉強がトンチンカンな方向に行ってしまっても引き返せばよく、それもまたいいんじゃないか」と述べる。
2 感想
姜尚中教授は以前、「教育のブロイラー化」を嘆いていた。私も姜教授の意見に賛成する。学ぶことは楽しいことである。しかし現在の学生のように、事細かにレールの敷かれた教育課程でしか学んだ経験のない若者達に、はたして独学の楽しさを伝えることができるだろうか。
また柳川教授は記事の中で、「大学教育はこれから10年で大きく変わる。大教室の講義はネットに取って代られる」と語る。ネット講義は大学の門戸を開放するという面でメリットはあるが、「ネットに取って代られる」というのは、いささか大げさな表現ではないだろうか。やはり大教室であっても、教授の直接講義のほうが、緊張感があってよいものだ。社会人ならともかく、若者達には、できることなら教室での講義を勧めたい。
柳川教授の独学に関する定義は、とてもおおらかである。決して引きこもりを推奨しているわけでもない「独学の勧め」である。特に記事の最後の「勉強がトンチンカンな方向に行ってしまっても引き返せばよく、それもまたいいんじゃないか」というコメントに、独学で学んできた教授ならではの、楽しさや充実感が伝わってきた。
独学であっても、学びの友は必要だ。教室であれ、ネットであれお互いに切磋琢磨する友がいたほうがいい。
ぜひこの本を一度拝読したいものである。
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私ごとですが、独学実践済み・・・です。
30代子育ての時に通信教育で大学をでました。
入学時は何万人といたのに、卒業時は1000人未満に。
それだけ 意志が強くないと継続が難しいと言う事です。
夏のスクーリングは親に子供をあずけなければいけないし。
一番面白かったのは、今まで自分が興味があった学科よりも
意外な学科が点数が良かった事。
経験に悪い事以外はやってみなさい・・・ですね。
今では その努力の結果は、忘れるのみとなっていますが!!!。
投稿: マーチャン | 2014年12月26日 (金) 11時12分
すごい!通信制の大学を卒業されたのですか!?
私のような意志の弱い人間には難しいことです。
尊敬します。
>経験に悪い事以外はやってみなさい・・・ですね。
そうですね。
何事も勉強ですね。
ありがとうございます。
投稿: とんぼ | 2014年12月26日 (金) 21時03分