「頭のIQより心のEQ」~日本経済新聞~
1月6日付け日本経済新聞「頭のIQより心のEQ~感情制御や共感の能力」より引用・要約する。
1 EQとは
EQ(Emotional Intelligence Quotient)とは1990年にエール大学ピーター・サロベティ教授とニューハンプシャー大学ジョン・メイヤー教授が提唱したもので、「自分の感情を把握してコントロールしたり、他者の感情を理解、共感できる能力」のことであり、「心の知能指数」とも呼ばれる。これはIQの高さと社会的成功との相関関係を調査するなかで、成功を収めている人に共通する特性として注目を集めた。
EQはIQと異なり、遺伝などの先天的要素が少なく、教育や訓練を通じて高めることができるとされている。具体的には、「頭はいいけど仕事の成果は今ひとつ」、「仕事はできるけど仲間と一緒に働くのは苦手」とするビジネスパーソンは、「頭の良さ(IQ)」より「心の知能指数(EQ)」に課題があるとする考え方で、EQを鍛えることによってコミュニケーションなど対人能力を高めるように訓練する。
2 EQの8能力
- 自己認識力・・・自分の感情を自分でわかる力
- ストレス共生・・・怒りや不安などを自分で鎮める力
- 気力創出力・・・肯定的な情動を自分の中に作り出し、維持する力
- アサーション・・・自分の意見や判断を素直に伝える力
- 自己表現力・・・喜びや怒りを適切に表現する力
- 対人関係力・・・人間関係のトラブルを冷静に解決策を見いだす力
- 対人受容力・・・相手の感情状態を理解し、受け入れる力
- 共感力・・・相手の感情を我が事のように感じ取る力
3 EQ研修の利点
- 自分の感情を把握することで、イライラしているときでもより建設的に話せるようになった(28歳)
- 自分の考えをしっかり伝える。その上で相手の考えを引き出そうとするようになった(26歳)
- 人に動いてもらうために、相手の話を聞きながら指示を出すように指導法を変えた(48歳・管理職)
- 他者への共感力が非常に高いことがわかったが、「相談者と同化しすぎて流されてしまってはだめ」と助言を受けた(42歳・人事部)
- 相手の言い分が独りよがりになっていないか、第三者的な視点で見ることを意識するようになった(同上)
- 部下を叱る際も、怒る感情が期待の裏返しであることを伝えられれば、「部下の心に直接響きやすい」ことに気づき、「むしろ自分の感情に蓋をせず、把握することの方が大事」と考えを改めた(同上)
なお、このEQ研修は会社側がおこなうだけでなく、セイコー・エプソンでは労働組合が中心となっている。これは「もの作りは1人では成り立たない」との考え方からである。
4 EQテスト
EQ研修やテストを導入する企業は日本でも増えている。EQ研修最大大手のアドバンテッジリスクマネジメントでは、2013年10月から1年間で約2万人が受検し、約400社が研修を導入している。さらに新規採用で適性検査に用いる企業もある。
5 考察
「IQよりEQ」という言葉が一般的になって久しい。最近では、ネットでも無料で簡単なテストを受けることができる。これは、あくまでも参考資料として利用すべきである。
前述のとおり、EQは遺伝など先天的な要素が少なく、教育や訓練を通して高めることができる特性がある。これを企業側のみならず、労働組合も「社員研修の一環」として導入するならば、大いに賛成する。しかし新規採用で用いることには、疑問が残る。そのような企業は、社員育成を怠っていると判断されかねない。
EQテストを導入する際には、「訓練や研修で育成できる」という基本的理念を決して失ってはならない。
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