苗場山、1泊2日(その1/2)
もし苗場が平凡な山であったら、ただの奥山として放っておかれただろう。ところがこれは人の眼を惹かずにはおかない、そして一ぺんその山を見たら、その名を問わずにはおられない特徴を持っている。すぐれた個性は、どんなに隠れようとしても、世にあらわれるものである。
~深田久弥『日本百名山』~
7月の三連休の中の二日を利用し、苗場山に登った。この山は、早い時間から登山を開始すれば、なんとか日帰りも可能なのだが、今回は、あえて山頂で一泊してこの山を楽しむことにした。
越後湯沢駅からタクシーに乗る。運がよければ相乗りをお願いしたかったのだが、残念ながらその時間には、他の登山者がおらず、一人でタクシーに乗ることとなった。出費が痛い。
車中、ドライバーさんからたくさんの角栄さんの話を聞かせていただいた。私が子どもの頃は「悪の権化」のようなバッシングをされていたが、最近は数多くの本も出版され、魅力ある政治家としての再考が行われている。ドライバーさんも、若かりし頃にバスをしたてて目白の御殿に陳情に行ったという。角栄さんには、多くの人を惹き付ける魅力と行動力があったのだ。
9時、和田小屋到着。ドライバーさんにお礼を言い、身支度を整え、登山の準備をする。気がついたら帽子がない。どうやら新幹線の中に落としてしまったようだ。この暑さの中、帽子がないと生命にかかわる可能性がある。とりあえずタオルを頭に巻き、登山計画書を提出して開始する。
和田小屋は、標高が1384mと高い。それでも暑い。ここから開始する祓川コースは、スキー場のゲレンデの中を登るルートである。今日は単独登山。適宜休憩を取りながら自分のペースで登る。
苗場山は、「花の百名山」にも数えられる。
この日はコバイケイソウが見事な花を咲かせていた。
山小屋泊とはいえ、単独登山となると荷物が多い。汗をかきながら、ひたすら登る。登山道は、木道が整備され登りやすい。ところどころ休憩所の設けられており、設置された方々に感謝である。
やっとの思いで、第一関門の神楽ケ峰に到着。ここも立派な山頂であるはずなのだが、とても地味な標識である。そこには、苗場山までまだ「八合目」と表示がされていた。
しばらく歩くと、山のご褒美である湧き水の「雷清水」に到着した。冷たい水でのどを潤し、顔を洗う。苗場山の山頂には水がないため、合計4リットルをザックに詰め込んだ。それは、ザックの重さに直結する。結果的には、夜と翌朝の分も含め、3リットル程度でよかったかもしれない。
この場所からは、今回の本命である苗場山を仰ぎ見ることができる。しかし、一度下ってから、再度登り返さなければならない。思わずため息が出る。
途中、下る登山者と挨拶を交わし、「あとちょっと」と励まされながら山頂に到着する。
他の山では、山頂となると多くの人がいるものだが、ここには誰もいない。この場所以外に、展望を楽しむ場所がたくさんあるのだ。
そのまま本日のお宿となる苗場山自然体験交流センター(苗場山頂ヒュッテ)に向かったが、チェックインしてしまうと、いつものクセですぐに横になってしまうので、あえてそれをせず、ザックを背負ったまま周囲を散策する。
小屋近くにある、伊米神社で手を合わせる。ここはお米の神様である。今日の登山の無事を感謝するとともに、これからもおいしいお米が食べられるようにと手を合わせた。
古来、苗場山では、山頂周辺に多数存在する池塘を「神様の田んぼ」と呼んでいたという。そこから「苗場」と名づけられたそうだ。
ただ休憩しているのも何かと思い、久しぶりに非常用に持参しているアマチュア無線機の電源を入れてみる。苗場山は2145mである。ここから約160km離れたさいたま市からの電波を、強力に受信していた。さいたま市は、自分の地元近くということもあり、コールしてみようと思ったが、こちらはわずか5Wハンディー機である。さらに今は免許はあっても、連盟に加入しておらず、カードの交換もできない。そこで、単にワッチするだけにとどめておいた。
午前中の暑さとは異なり、山頂は夕方となると少し肌寒くなった。その寒さを感じた頃、チェックインする。
荷物を降ろし、本日のベットに案内される。幸いなことに、今夜は3人用のスペースに2人で横になるスペースを割り当てられた。
荷物を整理した後、小屋付近の展望台で夕日を眺める。まだ日は高いが、一面の雲海に浮かぶ夕日は、とても美しい。
この写真では、日の出のように見えてしまうかもしれない。
18時に夕食をいただく。節約を目指すならば素泊まりでも良かったのだが、ここは南魚沼産のお米の産地。名物のカレーを、しっかりお代わりした。
19時ごろ、再度展望台へ。多くの宿泊者たちがそこからの景色にシャッターを切っていた。
世の中、イライラすることが多いけれども、山の景色はそれらを忘れさせてくれる。
やはり、山は素晴らしい。
(つづく)
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