自分だけは大丈夫だと思わないで~八ヶ岳連峰・阿弥陀岳遭難事故~
信濃毎日新聞のWEB記事によると、4月25日八ヶ岳連峰・阿弥陀岳で単独行の都内の男性(36)が遭難し、救助された。しかし、収容後のCT検査による肺の検査で、新型コロナウィルス感染の疑いが浮上し、PCR検査を受けることとなった。検査後、被救助者は陰性であったが、救助ヘリに登場した県警山岳遭難救助隊員やパイロット、整備隊員10名が、松本空港に帰着した後に濃厚接触者として、自宅待機を余儀なくされたという。
緊急事態宣言が発令され、日本全国で自粛要請が続き、自宅待機の日々が続くと、どうしてもストレスが溜まってしまう。被救助者は、山ならば出会う人も少なく、空気もよいので、つい大丈夫と考えてしまったのだろう。先日、日本の山岳4団体が共同で登山自粛の要請を発表した。それにもかかわらず山に入り、このような重大事故を発生させてしまったというのは、その被救助者に「自分なら大丈夫」というおごりがあったのだろう。
登山活動は、冒険遊びやサバイバルごっこではない。しっかりとした知識と経験、事前の計画、十分な装備、さらに現場での的確な判断力を要するスポーツだ。どんな登山者であれ、自分のみならず他者への配慮をもって登山活動をすべきである。「自分なら大丈夫」という考えは、現に慎まねばならない。
割合から考えると、登山による事故は、他のスポーツと比べて事故の発生確率は低い。しかし、他のスポーツと大きく異なるのは、一度事故を起こしてしまうと、大きな記事として扱われる。それは多くの人々に迷惑をかけ、単なる自己責任という言葉だけでは片づけることができない事故だからなのだ。
これまで私は、「わざとホームランを打たれようとして投げるピッチャーはいない。同様に、わざと遭難しようとして山に入る登山者はいない。」と性善説で考えてきた。これまで遭難事故が発生した場合も、その人を擁護する立場で発言を続けてきた。その前提の上で、この被救助者にはしっかりとした指導者はいなかったのだろうか。また一般の人であれ、その人がこの時期に登山すると聞いたとき、それを止める人はいなかったのだろうか。都内在住とのことだが、登山先の地元の人に感染させてしまうかもしれないという疑問は持たなかったのだろうか。
この被救助者には、今後しっかりとした指導者の下で登山活動をすべきと提案したい。そのうえで今回の事故を教訓に、ぜひとも登山を続けてもらいたい。
繰り返しになるが、登山において「自分なら大丈夫」ということはないのである。
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