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2020年5月28日 (木)

アフターコロナの登山活動【山岳医療救助機構】(その2/全2回)

 前回に引き続き、2020年5月24日に山岳医療救助機構から発表された「登山再開に向けた知識」について検討する。

なお前回も書いたが、この記事は私個人の分析・見解を含んでいるため、記事の二次利用についてはご遠慮いただきたい。

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 槍ヶ岳槍沢ルート(記事とは関係ありません)

4 宿泊

 ①テント泊
 従来の登山のマナーとしてテント泊の場合は、グループの中でテントの数を減らすことが求められていたが、今回の発表において「家族など同一世帯や、共同生活をしている人同士ならば同一テントの利用は、感染リスクを抑えられると考えられる」としているが、「テントは、一人一つ、が好ましい」としている。
 かつては、同一グループ内であれば男女を問わず一つのテントに宿泊してた時代もある。これは荷物の最小化とテント場の面積によるものである。また最近でも、キャンプ地の管理者からキャンプ指定地の面積の問題からできる限り同一テントに宿泊することが求められていた。とはいえ国有林などを借用したキャンプ地の面積拡張は難しいと思われる。

 ②山小屋泊
 山小屋は、日ごろ生活をともにしていない人同士が寝食を共にする場所である。また、滞在中に感染者がいた場合であっても、それが判明するのは下山後の検査となる。さらに感染者が発生した場合は営業中止にもなりかねない。山小屋は緊急避難所としての役割もある。登山者の自覚を基本とした対応策では不十分な内容といえよう。

 ・事前予約、持参品について
 最近では、山小屋に宿泊する際は予約をすることがマナーとされているが、実際には予約せずに当日に宿泊の申し込みをするケースも多々存在する。また前述のように山小屋には緊急避難所としての役割もある。そのようななかでソーシャルディスタンスを維持することが可能なのか疑問が残る。
 また、共用寝具は感染のリスクを高めることから、「寝袋を持参」することが一番の安全と示している。テント泊と異なり山小屋泊は荷物の軽量化を図り、長距離の移動を行うために有効のはずだが、荷物の増加は負担を増加させる。その点を理解しながら登山計画を再考し、宿泊しなければならくなってしまったことに、残念と言わざるを得ない。

 ・入館前に「マスク」着用、食事以外は寝るときもマスク着用
 高山病を防ぐためには、入館後に水分を多く摂取し、ゆっくりとした呼吸を繰りかえすことが必要である。通常より空気の薄い場所でマスクを着用せねばならないことは、登山者の安全を考えたうえで仕方がないとは理解しつつも、疑問が残る。

 この他にも
 ・入館後の手洗いの徹底
 ・ソーシャルディスタンスを保つ
 ・衣類や道具の共有はしない
 ・洗面所を感染源にしない
 ・食事・宴会においてもソーシャルディスタンス
 ・マスクをしての就寝
 ・スタッフを守る
 など示されている。

5 山で発生する病気の徹底した予防

 新型コロナウィルス感染の症状と、熱中症・高山病の症状は似ている。したがって「熱中症や高山病の場合、新型コロナウィルス感染を疑った扱い」をしなければならない。予防という点では理解できるが、医師でない者による現場での判断は難しい。自粛生活の長期化やマスクを着用しながらの登山となると、リスクも高い。最終的にはリーダーをはじめとする各メンバーの自覚と責任が必要となる。たとえリーダーであったとしても、メンバーの日ごろの生活まではなかなか理解できないものだ。リーダーはリスクを回避するためにも早期の中止や下山指示を出さねばならない。これが後日、事故が発生し、訴訟問題となった場合への対応とはいえ、その判断には不安がある。

6 新型コロナウィルス感染が疑われる/発生時

 37.5℃以上、咳や息苦しさがある場合は、新型コロナウィルス感染を疑う。

 ①山小屋で
 A入館前のスクリーニングで疑われた場合
  a 早い時間帯の場合は、フェイスシールドとマスクをして速やかに下山する。
  b 小屋に留まる場合は、別室を設けるか、屋外に張ったテントでの滞在となる。その際にはトイレと洗面所を他の人とは別にする。
 B滞在中に症状が出た場合
  隔離し、上記Aaと同様に対応し、滞在中に接した人を「濃厚接触者として扱う」ことが求められ、その人も隔離する。

 登山者の一人として、ここまでして山小屋に宿泊する必要があるのかと考えざるを得ない。これならば最初からテントでの宿泊として計画した方がよいのではないかと考える。山では常に濃厚接触者にならないことが求められることについては、頭では理解できるが、なかなか難しい問題でもある。

 ②登山中に発症

 ・自力歩行か可能な場合は、フェイスシールドとマスクをして速やかに下山する
 ・自力歩行が不可能な場合は、救助要請をする

 これもなかなか難しい問題だ。そもそも37.5℃以上で自力下山が可能かどうか、そして咳や息苦しさがある登山者にマスクを着用させての下山が安全かどうかの問題もある。さらに今後は、感染予防に各メンバーがフェイスシールドとマスクを持参した登山を求めねばならなくなってしまったことも新たな変化だ。
 山での発症を考えた場合、平地とは異なり救急車での搬送は難しい。これらのことを完全に理解しているが、そのことが登山人口の減少にもつながりかねない。登山活動の活性化を求めてきた自分としては、実に残念なことである。

7 怪我や体調不良の人に出会った時の対応

 応急処置を実施する際に、一番最初に行うことは要救助者に対する「声かけ」であるが、今後は偶然遭遇した要救助者に対して新型コロナウィルス感染を疑った対応が求められる。これは大きな変化である。

・傷病人が話せる時
 マスクを着用し、ソーシャルディスタンスを保ち、要救助者にマスクを着用してもらう。その後、必要となる質問を実施し、救助要請の要、不要を確認する。
・傷病人に声をかけてもはっきりした返答がない場合
 自ら感染予防ができない場合は、救助を呼ぶ
 自ら傷病人に接触して手当てをする場合は、マスク、手袋、帽子(バフなどで髪の毛と耳を覆う)カッパ着用、サングラス・ゴーグル・フェイスシールドを着用したのち、疾病人がマスクをしていない場合は、本人の持ち物で鼻口を覆い、自分が安全に行える範囲で応急処置を行う。
・感染リスクの高い応急処置
 心肺蘇生
 人工呼吸
 気管内挿関管
 高流量の酸素投与

 上記内容を見る限り、基本的に一般の人が救急法として学んでいることを実施できないと考えた方がよいだろう。これは大きな変化でり課題といえよう。山での事故は、発生件数の割合から考えると他のスポーツより少ないとされるが、一度発生してしまうと大きな事故となる。そのため、登山者は救急法の学習が必要となるが、従来の方法では対応不可となる。このことについては今後、日本赤十字社や消防などの各機関で検討することが求められる。

・・・・・・・・・・

【考察】

 救急法については、一般人の応急処置は、日頃から医療や救急関係に従事している人と異なり、民法上の「緊急事務管理」とされ、その要救助者に対する発見者の処置過程における過失責任を問われないこととされている。しかし、今回の新型コロナウィルスへの対応から、要救助者を発見しても、身内でない限り「何もできない」、「何もしない」ということが認められることとなる。法律上の責任を問われないことは当然だが、処置が遅れたことによる発見者への世間や遺族からのバッシングや、本人の良心的の呵責から守るまでの対応を求めたい。

 アフターコロナの問題は登山活動に限らず、今後多くの場面でその対応を変化させる必要がある。登山活動に限って例外は認められないというのも理解できる。しかし、簡単に言えば、「汗をかいても手で拭けない」レベルの変化だ。我々の義務として、この急激な変化に対応した知識を身につけ、対応を考えねばならないものの、それにも限界がある。早期に新型コロナウィルスに対応したワクチン開発や治療法の確立を待たねば、登山活動ができないのは残念なことである。

以上

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