内田樹のグラン論~カミュ『ペスト』より~
カミュの代表的著書『ペスト』は、新型コロナウィルスの蔓延により、全世界で再注目されている。
もともとは、フランスでのドイツへの抵抗運動を隠喩とした小説であり、カミュはこの作品で1957年にノーベル文学賞を受賞している。
内田は自身のブログ(『内田樹の研究室』2020-4-22)の中で、この小説に登場する小役人のジョセフ・グランの生き方について注目し、グランについて「カミュにとっての理想的な市民としての『紳士』だったんだろう」と述べている。
小説『ペスト』の中でグランの役柄は、昼間は役所で働き、夜は趣味で小説を書くような素朴な生活を送っていた。しかし、街にペストが流行するやいなや、医師のリウーが「保健隊」を結成すると知り、その「保健隊」に真っ先に志願し、やがてその流行が収まると、何事もなかったかのように元の生活に戻っていくという人物だ。内田は同記事の中で、そのグランについて、
「紳士」にヒロイズムは要りません。過剰に意気込んだり、使命感に緊張したりすると、気長に戦い続けることができませんから。日常生活を穏やかに過ごしながらでなければ、持続した戦いを続けることはできない
と述べ、さらに彼の生き方そのものが、カミュにとっての理想的な市民としての「紳士」だったのだろうと評価している。
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グランの生き方を、理想的な「紳士」とする。
私は「紳士」でありたいと思う。
「紳士」は決してヒロイズムを求めない。
それでよいのだ。
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